トングが大学の資金を貯める為に、
1任期だけ自衛隊に籍を置いていた話は、以前致しましたが、
今回はその前期教育期間のお話し・・・
神奈川県に武山駐屯地という、部隊があります
厳密に言うと、航空自衛隊の実戦部隊や、補給部隊なども駐屯して
おり、陸・海・空とむちゃくちゃな混成部隊なのですが・・・
基本は、関東近辺の陸・海自の「前期教育専門部隊」、が正解
~新兵に3ヶ月かけてイロハを仕込む所です。
トングが入隊した月は18~25と年齢に違いはありましたが、
12人部屋で寝食を共にする班が10班もありました。
もちろん連帯責任の腕立て伏せなどの毎日で、
次第に仲間意識が次第に芽生えます。
またそれぞれの班に、班長と副班長が置かれ、統括するのですが
それは、各実戦部隊から2、3曹レベルの人が、3ヶ月の出向で
統率力の勉強をしに来る訳です。
・・・・トングはその班に恵まれました。
互いに体力、技術を研鑽しあって、友情以上のライバルとしての
人間に出会いました。
だから互いの深い部分まで話せる仲になっていて・・・
ある日の食事時間に、不意にこの友人に
トングの「水」のトラウマを話したのです。
前期教育期間は外出許可殆ど出ません・・・月1回位かな~
すぐに外の世界が恋しくなるからね~
ですので、休みの日は自主トレするのが、トングの過ごし方でした。
基礎訓練で、筋肉が見る見る付いてくるのが、面白い時期でしたから・・・
そんな休日、友人に「トング!おいで~」
っと呼ばれて付いて行ったのは
海上自衛隊の屋内プール・・・
そこに班長と副班長もいるし・・・
・・・・ヤバイ!っと、本能のアラームが鳴りっ放し!
「さぁ着替えるよ~」・・・「水着は?」、「借りてる!」
ヤバ過ぎる!~、完全に退路を断たれた!!
着替え室から出てくると、
真ん中のレーンの仕切り浮き輪が端に寄せられているし・・・・
「犬掻きでも、何でも良いから二人で、死んでも向こうまで泳げ!」
・・・・班長!、ここは海自の救難訓練もするプールで、
しかも長さ50m、深さ3mです・・・
・・・・と言えないのが、自衛隊!
怖いけど、ここでの訓練で基礎体力は数段上がっている!
後は気持ちの問題!・・・でもそれが問題!
二人で、けのびでスタート、何とか浮いた・・・いけるか?
けど、体が「恐怖」を覚えている、
だんだん体が硬くなってくる・・・
不意に、視線の端に一緒にスタートした友人が、
トングのちょっと先で溺れている!?
いや、必死にもがいている!
なんかそれを見たら体が動いた!
泳ぎ方なんて知らないけど、必死に手足をばたつかせた、
ほんの少し進んで、思い切って、顔も水につければ楽だと気付く・・・
とは言え、今まで逃げまくって来た、水の抵抗、
現実は厳しい!
手に届く物は何も無い。
・・・体力の限り死闘の後、沢山水を飲み、溺れた・・・
・・・完全にパニックです!
それから、どうなったのか全然覚えて無いけど、
気が付くと、班長が仰向けになった
トングの首に片手を回して泳いでいる。
後ろ向きに引っ張られているので、友人が平泳ぎで付いて来ている・・・?
全く訳が分らない・・・。
下手に体力がある、おかげでかなりもがいて、かなり水を飲んだ。
ぜぇぜぇっと何度も水を吐いて、かなりの時間をかけて、やっと少し落ち着く、
しばらくして、班長が付いてくる様にと言う。
プールサイドを大回りにスタート地点の近くまで歩き、
7mの辺りを指差す。
「トングが泳いだ距離だ!、残りは俺が支えたが、
お前は50mも水の中に居たんだぞ!」・・・・
きっと、トングのトラウマを聞いた友人が班長に相談してくれたのだ。
今思えば、休日とはいえ、管轄の全く違う海自のプール、
2曹レベルで出来る事ではないかと・・・。
多分、その上の階級の方も、見えない所で「力」を貸して頂き、
このたった7mの為に「厳しい手」を差し伸べる機会を用意してくれたんだ。
友人など泳げないフリまでしてさ・・・
まったく、いい大人が休日返上で・・・まったく
この日ほど、人生の先輩達の、厳しいはからいに感謝した事は無い!
水関係で、「恐怖」と違う感情で涙を流したのは、
後にも先にも、この日だけでした。
もちろん、この1日で完全に恐怖が消えた訳ではありませんでしたが
この日、補助つきですが、15mをマークする事が出来ました。
その後、部隊配属になっても、戦車乗りなので、
水に浸かるような訓練はありませんでしたが、
除隊後、
区民プールに通い、
いい大人が、一人でビート板を使って必死で練習したよ!
あの日の「温情」に応える為なら
スイミングスクールの子供に笑われたって、全然平気だった!
トラウマというものは、
普通は、こんなにきれいに消えるものではありません。
ブログにすれば、3日間分のドラマティックな
きれいな文字の、ならびの長文で終わりですが・・・・
それでもトングは20年以上、
ずっと心穏やかで無い状態で暮らして来た訳です・・・
しかもこんな「荒療治」!
身体と精神が、ちゃんと機能している時で無いと無理です。
トラウマ=心的外傷は、
大小はあれ、誰でもが持ち合わせているものです。
しかし「身体」と「精神」と「心」のうち2つが大きくバランスを崩し
その一線を越えた時に、人がどうなるか?、
いずれまたの機会に、ご紹介したいと思います。
実は「精神」と「心」は似て非なるもの、なんですよ~!